大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都家庭裁判所 昭和36年(家)2238号 審判

申立人 藤田虎吉(仮名)

相手方 藤田みや(仮名) 外三名

主文

被相続人藤田光男(本籍京都市左京区○○○○町○○番地)の遺産を次のとおり分割する。

別紙目録第一記載の物件は相手方藤田みや、

同第二記載の物件は申立人藤田虎吉、

同第三記載の物件は相手方藤田行雄、

同第四記載の物件は相手方佐野伸子、

同第五記載の物件は相手方岡本キク

がそれぞれこれを取得するものとする。

理由

当裁判所は、本件記録ならびに京都家庭裁判所昭和三一年(家イ)第六八号遺産分割事件(本件と同一遺産にかかるもので、昭和三六年一二月一三日申立人藤田行雄により取下げられたもの)の記録にあらわれている諸資料により、以下に記述する各事実を認定しその他諸般の事情を考慮して、次のとおり判断する。

一、被相続人藤田光男(本籍京都市左京区○○○○町○○番地)は昭和三〇年一一月二九日死亡したことにより相続が開始し、申立人藤田虎吉はその四男、相手方藤田みやは被相続人の妻(昭和二三年二月三日被相続人と婚姻)、相手方藤田行雄は被相続人の長男、相手方佐野伸子は被相続人の長女、相手方岡本キクは被相続人の五女として、被相続人の遺産を相続するものであるが、申立人および相手方以外に相続人はないから各相続分は、相手方藤田みやが三分の一、その他の相手方および申立人はそれぞれ六分の一づつである。(相手方藤田行雄については、被相続人の生前その推定家督相続人たることを廃除されているが、これにより遺産相続権を失わない。)

二、被相続人の遺産は別紙目録第一ないし第五記載の不動産(その各価額は備考欄に記載、価格総計一一、九三一、一〇〇円)および現金総計五、九七〇、五〇〇円と認定する。

(イ)  被相続人の遺産に関する不動産としては、上記の外京都市左京区岩倉○○町○○○番地田一反二畝および同町○○番地田二反二畝四歩があつたのであるが、相続開始後これを国に買収されることとなり、昭和三五年一二月九日本件当事者から国に対し五、五〇四、二二〇円を以て売却処分し、その代金は管理人中川三助の手により銀行預金として保管中である。このような事情にあるので、上記の不動産の代金およびその利息金(管理費用を控除した額)四六六、二八〇円の合計額を以て、上記の不動産に相当する遺産と認める。従つてこの現金は各相続人の間で相続分に応じて当然取得する性質のものではなく、不動産分割による取得分の相続人間の不均衡をこの現金によつて平均させることとしたのである。

(ロ)  相手方藤田みやは被相続人の遺産として、京都市左京区岩倉幡枝町○○○番地山林一畝二九歩、同町○○○○番地山林一町八歩および同町○○○○番地墓地二畝二七歩につき五五分の一の共有持分があると主張し、藤井求の証明書が提出されているが公簿上明らかにされているものではなく、この共有持分を被相続人の遺産に属する権利として認定するに足りないのみならず、仮にその権利があるとしても分割の対象とならない性質のものと思われるので、この権利を被相続人の遺産に属するものと認めない。ただ本件審判においてこれを除外したからといつて、直ちにその権利がないと確定されるものではなく、相続人らの相続分に応じた持分の承継が否定されるものではない。

(ハ)  相手方藤田行雄については、廃嫡後分家するに当り被相続人から相当の生計の資本の贈与を受けたこと、および相手方佐野伸子についてはその婚姻のため被相続人から相当の贈与を受けたことについては、いずれもその事実を窺われないことはないが、その贈与の価格を明認することができないので、この両名を特別受益者としてその相続分につき考慮を加えることをしない。

(ニ)  被相続人の債権債務および所有動産については、いずれもこれを明認するに足る資料がないから、これを相続財産と認めない。

(ホ)  本審判による遺産分割の効力は、昭和三〇年一一月二九日被相続人の死亡により相続が開始した時にさかのぼつて生ずるのであるから、本審判によつて各相続人が取得した各不動産につき、それ以外の者がその不動産の公租の支払その他の負担行為をなし、または小作料の収受その他の利得をなした事実がある場合は、その関係者の間においてこれを清算すれば足るものである。

三、被相続人の遺産は前記のとおりであつて、前記相続人らの相続分に従つて、その財産総額を按分すれば、

相手方藤田みやが五、九六七、二〇〇円

申立藤田虎吉、相手方藤田行雄、相手方佐野伸子および相手方岡本キクが

それぞれ二、九八三、六〇〇円ずつ

という計算になる。よつてこれを基準として不動産および現金を分配することとなるが、不動産の帰属を決定するについては、諸般の事情殊に本件遺産分割については調停の過程において殆ど関係人間に異存のなかつた分配案ができた事実(この案は前記二(イ)記載の不動産の多額による買収が起つた等の事情からなかなか合意に至らなかつたものである。この分配案以後不動産の評価に変動があり、かつこの分配案は必ずしも相続分に応じたものでなかつたので、本審判においては必ずしもこの案により得なかつたものである。)を参酌して、主文のとおり分割することとし、その相続分の価額に満たない部分を現金を以て平均せしめることにしたのである。

四、本件調停ならびに審判に要した費用は、殆ど別途清算ずみのものであるから、特に主文においてこれが負担を命じない。以上の理由により主文のとおり審判する。

(家事審判官 城富次)

別紙 目録

第一 (1) 京都市左京区岩倉幡枝町所在

地番  地目   地積       備考(価額)

○○○○番 田  二反七畝二二歩 二、一六三、二〇〇円

○○○番 山林   二畝二六歩   三〇一、〇〇〇円

○○○番 山林 六反四畝 六歩   三〇〇、〇〇〇円

○○○○番 山林   二畝一二歩    四一、〇〇〇円

○○○○番 山林     一九歩    四七、五〇〇円

○○○○番 宅地   二一坪八合    五四、五〇〇円

(2) 京都市左京区岩倉木野町所在

地番  地目   地積       備考(価額)

○○○番 山林 三反三畝二六歩   一〇七、〇〇〇円

○○○番 山林  六反六畝二歩   二四〇、〇〇〇円

(3) 現金 二、七一三、〇〇〇円

(以上藤田みやの分)

第二 (1) 京都市左京区静市市原町所在

地番  地目   地積       備考(価額)

○○○番  畑     一畝五歩    七七、〇〇〇円

(2) 京都市左京区岩倉木野町所在

地番  地目   地積       備考(価額)

○○番  田   二畝二八歩   三九六、〇〇〇円

○○○番 山林 五反九畝      二五〇、〇〇〇円

○○○番 山林 三反六畝一〇歩   一一七、〇〇〇円

○○○番 山林   五反一〇歩   一七一、〇〇〇円

○○番 宅地 二四二坪    一、四五二、〇〇〇円

(3) 京都市左京区岩倉木野町○○番地所在

家屋番号同町二三番

種類   構造     床面積   備考(価額)

居宅 木造瓦葺平家建 一四坪五合

倉庫 木造瓦葺平家建  五坪七合 一二八、〇〇〇円

物置 木造瓦葺平家建 一一坪三合

(4) 現金  三九二、六〇〇円

(以上藤田虎吉の分)

第三 (1) 京都市左京区岩倉幡枝町所在

地番  地目   地積       備考(価額)

○○○番 田  一反一畝二二歩   八八〇、〇〇〇円

(2) 京都市北区上賀茂ケシ山所在

地番   地目     地積持分            備考(価額)

○番地   山林 七町三反二畝一〇歩の内持分2/75  一、四二〇、〇〇〇円

○番地の一 山林   一反三畝二〇歩の内持分2/75

○番地の三 山林   四反九畝一六歩の内持分2/75     七五、〇〇〇円

(3) 現金                         六〇八、六〇〇円

(以上藤田行雄の分)

第四 (1) 京都市左京区静市市原町所在

地番  地目   地積       備考(価額)

○○○番 畑    一畝一四歩    五七、二〇〇円

○○○番 田    九畝二七歩   七四二、五〇〇円

○○○番 田      二三歩    五七、五〇〇円

○○○番 山林   八畝一四歩   五二三、〇〇〇円

○○○番 山林   五畝二一歩   三七六、二〇〇円

(2) 現金         一、二二七、二〇〇円(以上佐野伸子の分)

第五 (1) 京都市左京区岩倉幡枝町所在

地番  地目    地積       備考(価額)

○○○番 田   一反一畝七歩   八四二、〇〇〇円

(2) 京都市左京区静市市原町所在

地番  地目   地積       備考(価額)

○○○番 田    三畝二三歩   二八二、五〇〇円

○○○番 田    五畝一三歩   四〇七、五〇〇円

○○○番 田      二三歩    五七、五〇〇円

○○○番 山林    三畝五歩   一二七、〇〇〇円

○○○番 山林   二畝二〇歩   一六八、〇〇〇円

(3) 現金         一、〇二九、一〇〇円

(以上岡本キクの分)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例